屋上に断熱材を敷いたり、外壁に反射性塗料を塗れば、夏の遮熱に有利であるとされます。
ただその効果は? となるとはっきりした数値を提示するのは難しいです。
空調の電気使用量がどれだけ減るかとなればなおさら数値化が難しいところです。
定性的に語られるこれらのことを、定量的に説明できたら・・・
データの蓄積が無いものは、一から実験を通してデータを収集していきます。
地味で地道な作業を通して技術力をも蓄積しています。
昼間の日射熱をコンクリートが蓄熱し、
夜になってもなかなか温度が下がりません
※屋上の断熱仕上げ・反射シート 壁面の反射塗料塗布で室内環境は大きく変わります
実在建物における実証実験 (神戸大学共同実験より)
限られた予算の中でより効果的な改修を行うには、各改修工事の対策効果をより具体的に検討する必要があります。
今回は夏期の冷房負荷削減効果に着目し、実在(現住)建物において環境改善工事を行い、対策の前後で室内環境および空調エネルギー消費がどの程度改善するかを検討しました。
実験の概要
改修工事の前後比較
屋上
傷んだ既存の防水層の上に、断熱材(熱伝導率0.028W/mK:カタログ値) と 高反射率防水シート(近赤外域日射反射率71.1%:カタログ値)を施工しました。
屋上表面温度は、ピーク時で10℃程度低下します。屋内側の天井面温度も5℃程度低下し、温度変化が非常に小さくなっているのが分かります。リビングの室温も安定し、空調で制御されているのが分かります。
また、1日の電力消費も1.7kWh少なく(節電)なっています。
西側壁
日射反射率の高い高反射率塗料を塗装しました。使用したカラー:ライトグレー(反射率67.9%:カタログ値)
屋上表面温度の変化は参考ですが、外壁面温度の発生ピーク時刻の変化と温度低下が明確に確認できます。コンクリートの蓄熱が穏やかになったことは、壁面部の温度変化にも現れており、対策の効果として認められます。
上記の例は、外気温の変化が同様な特定の1日を比較した結果ですが、外界気象条件がよければ(日射が十分にあり温度変化がある場合)、改修の効果が確認できるという事例です。
※体感的な差異さらには季節を通しての空調電力の低減については更なる検討が必要です。
屋上部表面温度の比較
改修建物と未改修建物との比較
写真撮影は2013年8月5日
10:06~10:31に実施
天候:晴れ
写真①
※③とは表面の状況が異なり、かなり高温に計測される
(③のほうが改修前の状況に近い)
写真③
写真②
写真④
表面温度は、ピークが55℃から45℃に10℃程度低下しました
その後、居住者からは「改修前は、夜中から朝方まで室内はとても暑かったが、改修後は夜になると涼しくなった」「改修前は、エアコンの追加購入も考えていたが省エネ改修工事の効果が出たので購入する必要がなくなりました」といった体感報告を得ています。